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プレスジャーナル
2006・9月号
細田勇蔵の紹介記事
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不可能を可能にそれが技術屋魂
東京・大田区の町工場にある細田電機は,変圧器などを扱ういわゆる下町の中小企業だ。その代表取締役の細田勇藏は,本業とは別に,これまで培った技術力を生かして世の中に何か新しいモノ,役に立つモノを提供しようと常に挑戦し続けている。
44年に秋田の農家に生まれた細田勇藏は,幼少の頃から「モノ作りの好きな悪ガキ」と自身が語るように,傘の柄と自転車のベアリングで鉄砲を作製したりしては駐在所に呼ばれるような少年だった。そんな少年時代に近所の真空管ラジオを直したところ「お前は,百姓なんかやるよりも電気屋をやれ」とおだてられ,電気屋になろうと15歳で上京。明電舎の子会社であった変電設備工場に就職した。社員は800名,その内,寮に住んでいたのは300名。様々な経歴を持った者が集まった大所帯であり,細田は大卒組には負けまいと夜学に通いひたすら勉学に明け暮れた。そんな折,当時の明電舎の社長に「トランスを覚えれば電気があるうちは飯の食いっぱぐれはない」とそそのかされ,騙されたつもりでひたすらトランスの技術を身に付けた。
しかし,東京オリンピック後の不景気で会社は倒産。細田はトランス技術に磨きをかけるべく三菱電機,日立製作所,スタンレー電気などの技術工場を転々とした。そして,25歳の時にアパートの一室から細田電機を創業,31歳で自分の工場を持つまでに成長させた。努力を惜しまない細田は,業界内で高電圧の優秀な技術者として評判になった。そうなると,大企業からの困難な依頼が多くくる。例えば,スパッタリング装置の電源は,当時,国内で高電圧に耐えられる電源を作れず,装置メーカーは米国から高額で購入せざるを得ない状況だった。そうした問題も細田に解決の依頼がきた。その他,新幹線のATS,MRI,コピー機の電源など他所ではできない依頼をこなし,期待以上の製品を作り上げてきた。しかし,寝る間を惜しんで開発しても,直ぐに大手企業は,コストの安い会社や地域に製造を回してしまうという。ところが細田は「大企業がしっかり仕事してくれなければ中小企業はやっていけないし,中小企業があってこそ大企業が成り立っている。それに次から次に来る困難な依頼に挑み良いモノを作り上げるのが楽しくて仕方がない」と語る。自身の技術力に自信がなければ出てこない言葉である。
細田が50歳を過ぎた頃、大手電機メーカーにいた子息が「親父のように技術者としてやってみたい」と家に戻ってきたのをきっかけに本業を子息に任せ,細田は自分の技術力を世間に見せてやるために,新しいモノづくりを決意する。細田は今まで大手企業と組んで新しい技術開発を行ってきたが,今度は単独で本業とは違う分野で特許をとって世の中に新しいモノを提供したいとの思いがあった。当時,ディーゼル車から排出されたNOxなどが大気を汚染させているとして話題になっていた。一般的な解決策としてフィルタでの除去方法が採られていたが,細田はフィルタを用いるよりも完全燃焼させれば有害物質は減らせる,加えて燃費も向上することに気付いた。細田には思惑があった。強力な磁界を通すと水が活性化するという事象から,水と同様に燃料にも何かしらの効果があるのではないかと推論し,研究を重ねた。結果,自動車の燃料パイプに強力な磁石を取付けることで,黒煙量の減少や燃費の向上を確認できた。そこから試行錯誤を重ね,やがて商品化に成功,市場へと提供を開始した。巷の評判は上々だった。
ところが,このような新しいことに対する世間の中傷は付きもので,業界の権威者なる者から根拠のない攻撃や批判を受けた。しかし,これがさらに細田の技術屋魂に火を付ける。特許権の取得にさらなる改良や開発,実験データの収集など,莫大な金と時間を注ぎ込んでその中傷を跳ね返した。
細田は語る「今までに無い新しいものが出来上がったということ,そして簡単に真似のできないものに特許権が認められた事に自分は技術者として誇りに思う。それにも増して,自分の作ったものが褒められると嬉しくて仕方がない」。モノ作りの好きな悪ガキの挑戦は,まだまだ続きそうだ。
(文中敬称略 山本周平) |
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